樟脳(しょうのう)をご存知ですか?
…という私も、仕事のご縁でこの樟脳に出会うまでは「合成樟脳」と区別がつきませんでした。
袋を開けると、ふわっと清涼感のある、懐かしい香りに包まれます。
「日向のかおり」は、日本に2社しかない樟脳メーカー、
宮崎県日向市にあるフジヤマスライサーの製品です。
この製品は衣装箱などの防虫用に使います。
「樟」の字は、「クスノキ」と読み、樟脳の原料はクスノキ。
そう、「となりのトトロ」の「クスノキ」です。
神社や仏閣に多くみられ、日本人に親しまれてきた樹木。
昔から衣類の防虫に使われてきた樟脳は、
クスノキを水蒸気蒸留して得られる成分です。
カンファ―(カンフル)という英名の通り、
メンソレータムやタイガーバームのようなどこか昭和の記憶にある香り。
松脂から採れるテレピン油を原料とした化学合成品の樟脳も広く出回っていましたが、
今はもっと強力な薬品系の製品が出回って、天然品はもとより合成品もあまりみかけません。
「においが移っていつまでも臭い」というイメージは合成樟脳やナフタリンのことで、
天然樟脳は風にあてればすぐ香りは抜けていきます。
詳しくはこの「日向のかおり」のサイトをぜひご覧いただきたいのですが、
アメリカで使用されていた映画フィルムのセルロイドの原料だった時代もあり、
日本は明治時代には世界一の樟脳生産国でした。
ところが戦後石油製品などに押されて国産樟脳は衰退の一途をたどり、
福岡の内野樟脳さんが最後の1社になろうとしていました。
宮崎県日向市の製材メーカー、フジヤマスライサーの藤山健一さんが技術を継承、
地域の林業家たちと協力して作り上げたのが「日向のかおり」です。
農業と同じように、林業の世界でも地域発、生産者発の取り組みを始めた人たちがいます。
大企業の下請けで安価な製品を作るのではなく、
自分たちのブランドで丁寧にものづくりをし、
地域の仲間を元気にしたいという想いのこもった製品です。
(miki)