沖縄名護伊差川の印雑2013新茶
あれれ?今年は突然のように満開の桜がやってきた。梅ほころぶ早春から、時至れりと迎えた桜の季節。そこまでの春をじわりと進んでいく時間もわずか。心の準備もできぬまま、どっしり腰を落ちつけて花見する感じもなく。どうも満開の桜に、どうもノリきれない自分を感じていたのだけど、食卓には菜の花、野の草なども並び始め、胃袋は否も応もなく、春の味覚に慣れ始めてきた。こうなると体はお茶にも相応の春らしさを求めてくる。ここのところ何とはなしの欠落感があって、いつものお茶の時間がどうも喜びが薄まって。

秋冬を乗り越えて春を迎えたお茶がよく熟成していれば、それは本当に喜ばしく、よかったねと声のひとつもかけてやりたい気持ちになっていた自分。2月3月というのは、そういう季節と思う。お茶は10月ごろに落ち着いた風味となるが、年を越してから、時を越える熟成を予感し、実感する。一直線の時間の経過に抗うように、腐敗でもなく枯れるでもなく、生を喜ぶことにも似ていて、喜ばしいことでしょう。

ところが季節は一直線ではなくて、巡ってくるもの、循環するものなんですねぇ。熟成などどこ吹く風と、春の草花が、春の彩りがどんどんやってきて、どうも僕の心も体も包み込んでしまった。それが最近の喜びの薄さだったのだと。僕は新茶を待ち望んでいたのだった。それは満開の桜が追い討ちをかけたとも言える。故・辻嘉一さんは懐石を1年心待ちといったけど、新茶は体が欲するものなのですね。

不思議なもので、昨日、沖縄・南城市のお茶サロン「茶房一葉」の上原さんからお茶と、手作りの野菜が届いた。お茶はなんと、大好きな印雑0131の新茶。さっそくいただくと、香りはエキゾチックで、元気をいただいたような気持ち。伸びはじめの生命力がまだ生きているようなフレッシュな香り。葉姿はたくましく日に焼け、「夏もこれからさー」とにこやかな表情で。南国のお茶らしくキリッとしたシブ味も好きだった。心や体の欠落感を埋めてもらったというか、これが新茶の喜びというものなのかと、あらためて知った気がしたのでした。

お茶は沖縄県でもお茶が盛んな名護のもの。やんばるのお茶。3年前、前職でシークワーサーの取材などで伺ったことがあった。シダや常緑の野生の樹木が繁茂する緑濃いところで、やはり雲南へと続く照葉樹林を意識させずにはおかない、郷愁あふれる場所です。

上原さん、貴重なお茶をありがとうございます!

やんばるの森。沖縄県名護市伊差川近辺。深い照葉樹の森です。オレンジ色の果実はシークヮーサー。2010年12月

やんばるの森。沖縄県名護市伊差川近辺。深い照葉樹の森です。オレンジ色の果実はシークヮーサー。2010年12月

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