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NHKのプロフェッショナルで岡山の酪農家、吉田全作さんが「牛舎の香りは牛乳に移る」というようなことを言っていたけど、これはほんとうの話。ニンニクを食べさせた牛の乳は、ニンニク臭い。有機肥料だって、魚粕肥料などは、その現物のニオイを嗅いだ人ならわかる、これは相当に臭い。そういう肥料をお茶に施せば、デリケートなつくりのお茶であるほど、それは香りに影響すると思う。

そういう心配のないはずの化学肥料などはどうかといえば、一時は100kg120kgもの窒素肥料を入れなさい、と指導されていたそうで、それは植物のあり方として異常な感じがします。第一に植物が吸収しきれない分は外環境を汚染する心配があるし、第二に吸収してもうまく消化できない窒素成分は葉や茎にたまってしまう。ほんらい光合成産物を原料に細胞をつくるはずの養分を、光合成が追いつかないほどに吸収していれば、そうなると思うのです。和牛で脂肪交雑を生み出す技術に似ている。こういうお茶の香りが良いかというと、やはり適正施肥(光合成応分の施肥)のものと比べたら、落ちるのではないかなぁ。むしろ光合成で産出されるC、H、Oが過剰気味の方が香味がいいんじゃないか。例として正しいかどうか、つゆひかりという品種があって、多肥にしてテアニンをよく生成する、確か。これを紅茶にすると、持ち味の旨味がじゃまして香りが引っ込んじゃった、という紅茶をいただいたことがありました。

こう考えて行くと、じゃあ無肥料はどうなんだという話になる。これがりんごなら、奇跡のりんごということ。とても難しいようだ。が、実際に無肥料でお茶づくりをしている農家を何人か知っているので、できないことじゃないようだ。短い経験だけど、無肥料、少肥もしくは与えても植物性のカヤ、油粕程度といった設計のお茶は、すっきりして香りも良いと思う。おそらく収量が少なくなると思うけれど、経済性は販売価格との兼ね合い。自家用でつくるなら無肥料がいいと思います。香味だけではなく、お茶って何だろうと考えたり、お茶をいただきながらお茶そのものを感じるときに関係する事柄なのかなと、今のところは思っています。ただ、肥料だけではなく、もう少しホリスティックな捉え方の中で、自然と肥料についてのスタンスが決まってくるようで。

上の大きなカヤ、月ヶ瀬の岩田くんちのお茶の肥料。彼の農園は動物性肥料は一切与えないそうだ。これだけのものを集めるのも、撒くのもたいへんそうだ。下、べにふうきだと思う。茶園は秋の3番芽、お茶は1番だったか。化学肥料ではなく、かさばるカヤ(足りない時は稲わらも)で育ったノンケミカル、ベジタリアン(?)のお茶っ葉はぷっくり。飲んだことのある人はわかると思うが、充実した香味の紅茶になる。

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