s-20141019-11
時間を見つけては近所のお茶を探し歩いています。以前からの興味に加え、今年6月に高知で開催された「山茶フォーラム」で同行させていただいた松下智先生から「ヤマチャは九州からずっとのぼって秩父まで続いている」と聞き、今年はさらにワクワクなのです。九州四国の山茶の道が関東までつながっているというんですから。

最初の頃はほんとにご近所の畦畔のお茶を、それからすこしずつ版図(?)を広げて、この日は以前から気になっていた、相模川流域の小さな峠道へ。そこは国道でも県道でもないどんづまりの場所で、行ってみると道路は行き止まりの看板で終わり。その先は車もバイクも通れない幅1mほどの野の道です。車を降りて歩けば、ゆるやかに登り、そして下る手前に道標。土地に詳しいか、何か特別な事情でもなければ行かないようなところで、この峠の周辺にお茶畑があるのです。

相模川は意外とふところ深い川で、両岸は左右さしわたし10キロほどで河岸段丘になっている。その隙間にぽこぽこと雑木林が点在し、山道が通っています。ところによっては資材置き場や巨大なゴルフ場、霊園になったり、開発も進んでいますが、この場所はまだ手付かず。近くに人家が数軒、くねくねした田畑があるだけで、昔の面影を残していると思います。お茶畑はそこの方が高齢で、維持できなくなり放置されていて、それなら見に行きましょうと伺ったのです。


行くと確かにお茶畑がありました。びっくりしたのは、細い峠道の両側に続く畦畔、山のさしかかりもふくめて、お茶の木が藪になって株立ちし、ひょろひょろ、ひろびろと枝を伸ばし、花をたくさん咲かせていたことです。そしてどうこぼれたのか、林道の脇のあちこちにもお茶。季節がら茶花が咲きまくってキラキラと、秋の光に輝いている。たまたまこの季節のこの時間だったせいもあり、それは美しいものでした。

放ったらかしで自由だなぁ。刈り込みもしないで、種から伸びるに任せたチャノキの枝ぶりはひょろひょろと貧弱ですが、自然な姿です。2メートルも3メートルも伸び、好きなだけ花を咲かせています。ほんとうに沢山の花。種もぽろぽろこぼれまくるので、道の脇にはお茶の芽がたくさん萌え出ていました。杉の林、そのかたわらに棕櫚。その脇に茶の木が実を結んで種を落とす。春に芽が出て根を下ろし、夏を過ぎて秋。下の写真の右に茶の木、その下の新芽がわかるでしょうか? お祀りの碑の脇で、何か循環のようなものを感じさせる、お茶のもともとの姿が現れているようで、手を合わせました。

s-20141020-43


この日は猿に遭遇!人家の植え込みに入ってはいたずらをするようで、おばあさんがパチンコで応戦していたところ、カメラを向けたらピタリ固まったのでパチリ!目が合ってしまった(笑)。

s-20141019-05
……お茶という植物は、人の生活と寄り添って広がったそうです。松下先生によれば、まったくの原生林での発見はなく、たとえそれが野生のように見えても、その場所は必ずかつて焼き畑や林業、農業などをしていた、そんなところに限られるということです。ということは、そこに誰かが種を蒔いたということ。このお茶の木も誰かが植えたものか、こぼれ種で自生したものなのです。今は寂しいこの峠道も、往来の盛んなころがあったかもしれません。……そう考えるのもまた楽しい。

いい一日に感謝!

«                   »

Leave a Reply