3月15日に開催された「お蔵フェスタ」、おかげさまで大盛況。お店に来てくださった皆さん、ありがとうございました!「お蔵フェスタ」は、自然酒「五人娘」でおなじみの寺田本家が年1回開催しているお祭りです。場所は千葉県香取郡神崎町。東京から東関東自動車道で成田空港より北、利根川が近づいたあたりののどかな町で、今回で9回目になったこのお祭りが功を奏してか、町自体も「発酵の里」としてけっこう有名になってきています。お祭りの当日は東京からJRの特急電車も出るし天ぷら油バスなんかもチャーターされて、この日だけ歩行者天国になる通りのそこらじゅうが人だらけ。普段がほんとのどかで静かな町だけに、この変わり様にはびっくり。行き先はフェスタのメイン、寺田本家で催されるお蔵めぐりや特設ステージだったりしますが、通りにずっと並ぶお店にも行列ができて歩くのもたいへんになってくるのです。
お茶はおなじみ熊本の「釜炒り山茶」、奈良の「薪火養生茶」、そして岡山の「美作焙じ晩茶」の3種類。釜香(かまか)がなんとも懐かしい「釜炒り山茶」は春の一番茶を鉄を通して高温で炒ってお茶にする、九州地方伝統の古い作りのお茶。「薪火養生茶」は肥料も農薬も使わない茶畑で3年生やしたチャノキの茎葉をモクモク煙が出るほどの強さで鎮めた、いわゆる三年番茶。そして美作のお茶は夏の炎天下、扱き採った茶葉を大釜で茹でて煮汁をかけながら天日干しして寝かせ、強く焙じて仕上げたお茶です。
この3つのお茶の共通点は「火」。お茶に火がはたらきかけることで、生なお茶の持っているアク、エグ味、好ましくないものがすっかりと抜け、安定した香気として定着するのです。このフシギな働きの奥は深く、まだまだその真髄の理解には遠いけれど、飲むとその良さがよくわかる。3つのお茶、火の入り方、変化の姿はそれぞれだけれど、どれもが静かで、体にやさしいお茶。この面白さが比べられる。今のお茶との違いもわかる、そんなお茶たちだと思っています。
もうひとつの共通点は「在来」。どれも血統書などない、その土地で種から何十年も生きてきた在来種のお茶ということです。その風味は、お茶の香味の細かいニュアンスを利くというより、全体観を感じて受け入れるようなものだといえます。在来のお茶はその土地の風味を宿していると思います。
そして3つめは「暮らしのお茶」ということです。3つのお茶とも、その地域で昔から親しまれてきた伝統的で、手づくりに近い加工方法で、その土地でそのお茶を味わうのに適した季節につくられました。釜炒り山茶は春、美作晩茶は夏、薪火養生茶は冬のつくりなのです。時と火の力をいただき、静かでおちついた味わいに熟した味わい。がぶがぶ飲めて、肩ひじはらない度量の広さのような気分が、飲む人をほぐしてくれるお茶。暮らしに溶け込んでいくお茶です。
そういうおもしろさ、お茶のそういう良さに気づいていただきたくて、今回、実験的だったけれど、狭いスペースにお茶席をこしらえたのでした。売れるより、お客さんの声を聞き、反応を知りたかった。「お茶いかがですか~」より「お茶飲んでって~」という感じで…………
慌ただしさの中でも、お茶席(というより井戸端?)はなかなかいい空間になりました。会話も弾んで笑顔も絶えず。鯛焼き買ってくお客さんにも楽しさが伝わるのか、売れなくていいやと思っていたお茶にもなんのなんの、興味持ってくれる方が意外に多く、説明するのも楽しかった。するとへぇーと、そうなのねーと、おいしいねーと。購入してくださいました。
今回は強力助っ人コマちゃんがいたし、友だちや仕事先の方々が次から次へとやってきて、お茶飲んでくれただけでなく、てんやわんやの切り盛りを見かねて手伝ってくれて助かりました!ありがとうございました。お出ししたお茶は近々ご紹介しますので、どうぞよろしくお願いします。期待してお待ちください!