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少しだけ暖かくなったので、散歩がてら近所のお茶(畦畔生垣系w)を見に行った。早くもというかやっとというか、ぱらぱらっと、新芽がのぞいているではないか。嬉々として次を訪ねるとこちらは勢いよく、比べると芽量も多く、なんとも気持ちがいい。ー

s-20150412-009 じつは、最初の畝は深めに台刈りがしてあり、元気なほうは刈り込みがなく自由奔放伸び放題。それで樹勢が違っていたのだ。お茶の畝はお茶摘みの時期も近くなると、新芽が生えそろうように刈り取る面を揃えていくが、これを台刈りとか化粧刈りという。最初の生け垣はこれで、親葉もほとんどなくなるほど深く刈られて細かな枝は露わ、そこから芽がちょろちょろ出始めていた状態。寂しそうに見えたのは、親葉がないうえ刈る前に先に出ていた新芽も落とされたので、ボリュームがぜんたいに少なかったからだろう。その一方、刈り込んでない畝は春の勢いそのまま。元気そうに見えたのは当然といえば当然だった。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *   伸び放題かあ、僕は一昨年に伺った熊本の茶畑の風景を思い出していた。そこは眺望のいい丘全体がお茶畑、しかもほとんどが在来種というとても貴重な場所。水俣市石飛の天野茂さん、浩さんのお茶畑だった。

その畑も乗用の摘採機で通すために台が刈られてあった。多様な形質で叢をなすゆえ不揃いな在来。その畝が直線に刈り込まれるから、畝肌は波模様に刻まれて美しく、菜の花畑みたいな黄金色に輝いていた。他所で見られないようなその色あいは、聞くと宇治系の在来ということだった。 丘からは霧島韓国岳、九州山地も連なって見晴らされ気分もいい。

丘の端っこにこんもり、放棄された伸び放題の茶畑があった。気になって見に行くと、うっ蒼としたヤブ。2メートルを越すようなチャノキのヤブだった。分け入ると中は意外なほど静かで、少し発酵したようなお茶の香りがしてドキっとした。野生のお茶は、こんないい香りを発するのか。2013年の春は遅霜がひどく、刈込みしていた畑は霜害で片側が黒くなった畝も多かったのだが、ここは平気で、伸び放題は香りがよくて元気なのかと、そんな印象が記憶に残っていたのだ。

 こういうところは機械が入れないから、手で摘まないとお茶にはできない。誰もそんなことはしないから放棄茶園なんだけれど、奔放な伸び放題を見ると、きっとおいしいお茶になるだろうなあと思ってしまう。

以前、放牧酪農の取り組みにかかわっていたことがある。小屋もなく厳寒の岩手の山奥に暮らす牛たちの姿を評して、試験場の方が「牛がかわいそうだ」と言った。地元の人は放ったらかし酪農、いいかげん酪農と呼んだ。普通なら輸入の穀物飼料をたくさん与えて密飼い、乳脂肪の多い牛乳を生産するのに、草しか食べない牛の乳は乳量少なく乳脂も低かった。だから認めてもらえなかったのだ。無理無駄なく、限りなく自然なままに。その牛乳はとびきりおいしかった!

話は戻って、自然仕立て。言うは易しではあるけれど、こういうお茶こそ、お茶にしてみたいと思うわけなのです。

水俣石飛。在来茶園は肌理が美しい

水俣石飛2013。在来茶園は肌理が美しい


左が在来、右は品種茶。。一目瞭然

左が在来、右は品種茶。。一目瞭然


放棄された茶園が気になった

放棄された茶園が気になった


鬱蒼、伸び伸び、茶の香り

鬱蒼、伸び伸び、茶の香り

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