s-20150508-001
4月下旬のこと、熊本は水俣の桜野園さんから今年初めて揉んだという紅茶が届いた。大切なお茶だからちゃんとと思っていたら、仕事が重なって遅れ遅れになっていて、やっと先日いただけることに。去年の秋、在来の葉っぱで試作した桜野園秋の芽スペシャルのすばらしさも記憶に新しいけれど、今回はまた違った意味でのお茶づくりがはじまっていました。

届いたのは在来園「ひでと」の仕上げ乾燥の違う2つ、在来園くべんの、べにふうき。それぞれ1回分の小袋で貴重なものです。忙しいお茶農家が、売り物ではないお茶を家族で手摘みして、少量ながら心を込めて揉んでつくったもの。封を開けると、なんて小さな葉っぱだろうと、ご家族がいっしょに摘んでいる風景が浮かんだ。そのかけがえのない瞬間。小さな葉っぱの細よれにいきなり萌え!ではなくて気持ちが動きました。

そのお茶2種を小さな100ccの茶海にそれぞれ開けて、熱湯で待つこと3分、4分、5分。ちびちび香りの変化を利きながら。最初からさわやかな香りが立ち上って清らかな気分です。

よく揉みこんだ葉は崩れもなく均一に発酵していて、3分でクイっといただくと味わいはいろんな要素が渾然として甘香ばしい。こういうお茶なら早く上げて、淡いうちから煎を重ねるのが正解だったかな、新芽の豆香を紅茶でどう生かすかなぁなどと、思いつつ次の湯を差し2煎目の様子を眺めれば、葉っぱは出がらしになる気配もなく浸出はゆっくり続く。待てば良く出て初煎よりも渋さにバランスが生まれ、水色は淡いけれどケーキに合わせて負けない感じ。いいなと思ったのはその後も伸びること。結局4回お湯を足し、翌日出がらしにまたお湯をさしていただいたほど!
s-20150512-002
このお茶は、摘んだ日が4月16日とのことで、季節は清明と穀雨のあいだ。正確には清明の末候で虹始見、雨の後に虹が出始める季節です。中国では春一番の小さな新芽でつくるお茶に、清明節の前という意味の「明前」をつけたりするけれど、これは穀雨の前。「桜野園雨前初摘みの紅茶」。小さな新芽の姿を崩さずに葉っぱの力をよく出せているのは、葉っぱの素性の良さもさることながら、園主松本和也さんの丁寧さ、ウデの良さからでしょう。見れば葉の先っぽまで気持ちが届いているのがわかります。これは残りの「在来園くべんの」、「べにふうき」も楽しみです。

今年のお茶が始まった緊張を家族でわかちあったお茶。お茶づくりそのものが、家族という共同体での、小さいけれど大切な儀式にもなっているようなお茶。季節の一コマの喜びが詰まっているお茶。そんなお茶に立ち会えた気持ちになり……6月は食の学校の塩川恭子さんにお会いする。良い報告になります。

4煎終えたお茶っ葉です

4煎終えたお茶っ葉です


追伸:桜野園のホームページは「お茶で一福 心ふぅわり 桜野園」という。これをつくる里実さんの文章にはいつも気持ちが入っていて、元気がほとばしって読んでいるこちらも楽しくなります。その元気さは、お茶を暮らしから切り離さず、家族農業、地域、大切なさまざまな価値と矛盾なく結んでいく、実はありそうでない挑戦への原動力になっている。それは農家の暮らしにお茶が復権するようなことと思い、共感しています。今回のお茶についても、お茶を送ってくれた里実さんがBlogで気持ちを込めて書いてくれています。お読みください!……

とびっきり、真剣に遊んでつくるお茶を。
第一弾 手摘み手もみ茶 ←これが今回いただいたお茶です
手摘み茶~ワクワクの理由~ 

tags / , , , , , , ,

«                   »

Leave a Reply