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月ヶ瀬から今年の紅茶。

グリニッシュ。萎凋で香りをめいっぱい発揚させて、発酵の間をおかずに殺青、揉みも最少に抑えたという。熱い湯をさし、様子を眺めつつ、ちびりちびり香り、舌で転がした。

岩田氏が“萎凋香”と呼ぶ花香は、バラ科というよりクスノキ科の爽やかさ。スパイシーでキレがある。植物の、くぐもったような体液臭にも引きずられず、すっきりと抜けている。水色は萌黄がかって透明、わずか差す朱を眺めているとどんどん染まっていく。もったいない感じがするからと、淡いうちに出してもアタックが強い。渋みから甘みがほぐれて回り、二度目に感じられる香りは喉から戻ってくる。

その消長の自然さに感心しつつ煎を重ねるうち、茶水は水に、茶葉は葉に還るように静かになっていく。すっかり安らいでいる姿をながめると、ところどころ擦れ、しなだれて寄り添う葉底は、ほんのり膜がかかってウーロン茶にみえる。シルバーチップが入れば、ネパールの名茶、ヒマラヤンスプリングみたいだ。

“有機紅茶月ヶ瀬春摘みムーンロック2016スペシャル”と、ちと長い名前のお茶。

成熟気味の葉は締まってみえた。葉の体脂肪率の低い、筋肉質といえばいいのか、うすく、しなやかだった。この葉から、春からの芽の伸び方や肥培管理を想像し、木陰での萎凋作業中、会心の笑顔で佇んでいた岩田氏の心持が思い浮かんだ。

「さえみどり」がもつ爽快な甘味と、「宮山茶園」の地勢を、素直に紅茶で表現できるよう意識しながら製茶しました、と岩田氏。

…香りを阻害するよけいな窒素は抜けていた。健康な葉はたくさん光合成をして渋みや甘みをつくりフェノールも増え、触媒となるミネラルもしっかり、香りが発揚された。…んじゃないかと想像をかき立てられたお茶。奥様のルナさんが、お茶のテロワールについて電話口で話してくれたけれど、僕はまだホントの意味で、茶山のテロワール感じたことがないなと思いつつ。

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