梅干しの産膜酵母と手仕事というものについて
例年ならそろそろ梅雨明けしてもいころですが、関東はなかなかすっきりとした晴天にならず、じめじめとした日が続いています。
早く梅干し干したい!今年は申年だからと気合い入れて大量に漬けたのに…
しかもこういう年はたまに出るんだよなぁーと思って白干し梅の蓋を開けたら、じゃーん!やっぱりいました「産膜酵母」。ちなみに紫蘇漬け梅はなんともなくいい色合いに。
「産膜酵母」って、醤油やぬかみその上に白く膜のように貼るあれですね。害はないけど、食味を悪くするので、醤油では取り除いた方がいいし、好気性なのでぬかみその場合はかき混ぜて下に埋めるなどします。初めて梅干しの産膜酵母を見た時は「がーん」とショックを受けたものですが、最近は「まあ、そういう年もあるのよね」と。
梅干しの「産膜酵母」についてはさまざま意見があって、果肉が柔らかくなるのでそのまま、という説もあるし、いやそれは仕事が雑だったのだからで取り除くべき!という説もあり。混ぜ込んでしまえば大丈夫、という説もあります。いずれもきっと一理はあって、私は私なりにこう考えています。
まず、産膜酵母が出たから何か手順に問題があったかというと、あまりはっきり特定できたことはないです。容器を他の用途に使いまわしたかも、くらいですかね。塩分はだいたい18~20%で毎年同じなので特に減塩しているわけではない。なので、環境や梅の様子により出ることもあるかなという感じです。
あくまで私流の対処としては塩梅を見ながら…
大量だったら取り除く(そんなに神経質にならなくてもだいたい除く)。なぜかといえばのちのち梅酢にして保管した時ににごったり、増えてくると味や香りが変化しやすくなるので。また、産膜酵母の上や周りに黒カビが出ることがまれにあるので(今まで1回くらいしか見たことないですが)。少量ですぐに梅雨明けして干せそうなら放っておきます。梅酢は干す時に1回濾せばよいかと。途中であまり見た目と味に変化がある場合は、冷蔵庫に入れて早めに使う、等々。
いずれにしても、身体に重大な害があるわけでなし、梅の顔色を見ながら考えて対処するのがよかろうと思っています。仕事がら「どうするのが正しいですか?」とよく聞かれるのですが、産膜酵母とてその環境に出てくる必然性もあったわけで、「なぜだろうか」からはじまり「さして有害なものではない、でも味が悪くなる場合もある」「ではどうしよう」と考えながら工夫するのが手仕事の楽しみでもあり、真髄でもあるかなぁと思います。その家のやり方、地域の伝統、千差万別だからおもしろい。
どんなことがらでも「これが正しい」をすぐに求めることは、世の中をせちがらく生きづらくしていくのではないかなぁ。梅干しに色がのらない年があっても、少々固くなった年があっても、ひとつひとつの経験が積み重なって豊かさというものを醸成していくと思うのです。