申年の梅干し、いろいろ経験できました

ジメジメとした日が続いて梅雨明けせず、梅雨があけてもどんより曇ったり突然ゲリラ豪雨に見舞われたりと、梅干しには少々受難だった申年。

それでも2週間くらいかけて晴れた日を待ち、ふわふわに干しあがりました!
今年はぜんぶで16キロ漬けたので、干す笊が足りなくてすだれを買って干したり。

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南高梅の白干しは梅の甘い香りが残ってやさしい味わい

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これは秦野の秋澤さんの十郎梅。皮が軟らかくてさわるとすぐ裂けてしまいそう、身はやわやわと愛らしい梅です
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こうやって梅の香りに包まれて並べているのは至福の時ですね
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梅酢と紫蘇も干します。自家製の味は、梅干しはもちろん、梅酢と干した紫蘇でもかなり市販品と違うおいしさになるから驚きます。きちんと作られた品でもなぜか自家製はおいしく感じるという…その家族の手の常在菌、家の環境に飛んでいる菌、いろいろなものが梅に宿って、その家族の分身のようなものになるからではないかなと思っています。

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ところで、今年はあちこちでワークショップをさせていただいて、なおかつ不安定な梅雨明けのおかげで、ありとあらゆるアクシデント、想定外のご質問をいただき、自分一人ではできない体験ができました!

「塩漬けしたら梅が青くなった!」
追熟させて黄色にした梅を塩漬けしたら、青くなった…という人が。でも現物見ることができなかったのでよくわからず。でも産地に聞いても様子を見て、ということだったので梅酢が上がるのを待ち、そのまま事なきを得ました。原因はわからないままですね。

「白いカビみたいなものが!」…という産膜酵母は自分の梅にも出ましたが、対処方法と考え方はこちらに

「雨に濡らしました!どうしよう!」
梅干しは、干しが足りないよりも雨にあててしまうことを避けたいので、ほんとうは出かける時はしまう、ちょっとでも天気があやしいと思ったらしまう、というそこだけは用心深くいきたいところなのですが、今年のような天気だと濡らしてしまう人もいたようで…ビショビショだったらまず布で綺麗に拭いて、晴れ間があればすぐ1時間でも干して、次に焼酎にくぐらせて、無事な梅酢があればその梅酢にもう一度1~2日漬けてから、天気のいい時に干します。梅酢が雨で薄まってたら、買ってくるか誰かに少しもらったほうがいいかも。

雨がいけないのは水分と雑菌なので、梅酢に入った雨が少量であれば、一度70度くらいに熱して殺菌したほうがいいかもしれません。沸騰させないように、水の入った梅酢も梅干し用には難しいけど殺菌しておいて料理には使えるので捨てないようにー。

「干してから紫蘇を入れるという方法がありました!そっちで作っちゃった!」
これは私も未経験でしたが、梅を3日3晩干してから紫蘇を入れる方法があるようで、そちらで作ったという人がいました。それでもちゃんと梅干しになったようで、よかったですが、どこかの地域のやり方なのか、もう少し調べてみようと思っています。個人的には、紫蘇の成分が梅酢に溶け出て、色もきれいに染まる時間が必要な気がするので、紫蘇は干す前に入れたいけど…

「失敗は成功の母」と言いますが、保存食や料理も、あんがい失敗したり想定外のことがおきると、それが貴重な経験値になっていくことが多いです。失敗したらすぐやる気をなくしちゃう人も少なくないのですが、大失敗はともかく、ちょっとした失敗、想定外の事態は楽しんで自分の肥やしにしていくのも豊かさというのではと思っています。

13. 8月 2016 by oishii-mura
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梅干しの産膜酵母と手仕事というものについて

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例年ならそろそろ梅雨明けしてもいころですが、関東はなかなかすっきりとした晴天にならず、じめじめとした日が続いています。

早く梅干し干したい!今年は申年だからと気合い入れて大量に漬けたのに…
しかもこういう年はたまに出るんだよなぁーと思って白干し梅の蓋を開けたら、じゃーん!やっぱりいました「産膜酵母」。ちなみに紫蘇漬け梅はなんともなくいい色合いに。

「産膜酵母」って、醤油やぬかみその上に白く膜のように貼るあれですね。害はないけど、食味を悪くするので、醤油では取り除いた方がいいし、好気性なのでぬかみその場合はかき混ぜて下に埋めるなどします。初めて梅干しの産膜酵母を見た時は「がーん」とショックを受けたものですが、最近は「まあ、そういう年もあるのよね」と。

梅干しの「産膜酵母」についてはさまざま意見があって、果肉が柔らかくなるのでそのまま、という説もあるし、いやそれは仕事が雑だったのだからで取り除くべき!という説もあり。混ぜ込んでしまえば大丈夫、という説もあります。いずれもきっと一理はあって、私は私なりにこう考えています。

まず、産膜酵母が出たから何か手順に問題があったかというと、あまりはっきり特定できたことはないです。容器を他の用途に使いまわしたかも、くらいですかね。塩分はだいたい18~20%で毎年同じなので特に減塩しているわけではない。なので、環境や梅の様子により出ることもあるかなという感じです。

あくまで私流の対処としては塩梅を見ながら…

大量だったら取り除く(そんなに神経質にならなくてもだいたい除く)。なぜかといえばのちのち梅酢にして保管した時ににごったり、増えてくると味や香りが変化しやすくなるので。また、産膜酵母の上や周りに黒カビが出ることがまれにあるので(今まで1回くらいしか見たことないですが)。少量ですぐに梅雨明けして干せそうなら放っておきます。梅酢は干す時に1回濾せばよいかと。途中であまり見た目と味に変化がある場合は、冷蔵庫に入れて早めに使う、等々。

いずれにしても、身体に重大な害があるわけでなし、梅の顔色を見ながら考えて対処するのがよかろうと思っています。仕事がら「どうするのが正しいですか?」とよく聞かれるのですが、産膜酵母とてその環境に出てくる必然性もあったわけで、「なぜだろうか」からはじまり「さして有害なものではない、でも味が悪くなる場合もある」「ではどうしよう」と考えながら工夫するのが手仕事の楽しみでもあり、真髄でもあるかなぁと思います。その家のやり方、地域の伝統、千差万別だからおもしろい。

どんなことがらでも「これが正しい」をすぐに求めることは、世の中をせちがらく生きづらくしていくのではないかなぁ。梅干しに色がのらない年があっても、少々固くなった年があっても、ひとつひとつの経験が積み重なって豊かさというものを醸成していくと思うのです。

 

 

 

 

 

23. 7月 2016 by oishii-mura
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