お茶を炒る


 

 

3日間ほど、静岡梅が島のヨダケンさんの2番茶お手伝い。
Yさんの指示で、朝5時から11時までの6時間×2日間ずっと、お茶っ葉を炒るという、極めてシンプルな作業に汗したのでした。

梅が島の2番茶は7月も終盤、梅雨も明け、ギラギラのお日様が照りつける過酷なコンディションでの作業になる。ヨダケンさんのところで、2番茶は紅茶づくりがメイン。煎茶と違って萎凋もあるし、ロットごとに状態を見極めながらの細かい作業が続くので、ヨダケンさんによれば「はかがいかない」手間のかかるのが、紅茶づくり。

もう30年以上も無農薬・有機栽培で紅茶づくりをしてきたヨダケンさんだから、紅茶の段取りはお手のもの。早朝の茶摘みを終え、庭に広げて日乾萎凋は9時過ぎ、よく晴れていればちょど2時間で萎凋を終え、自家製、工夫を凝らした室内萎凋にかけ、揉捻、乾燥で、夕方には一連の作業を終えて紅茶の荒茶が完成する。

その傍ら、ここのところ方向性を模索中なのが半発酵の釜炒り茶。20年ほどは試行錯誤を繰り返し、商品としては、とても温かみのある1品を世に送り出しているが、もっと良い品になるのではと、工程のひとつひとつを、地元の専門家や友人が集まっては、唸っているのである。ボクも口出しメンバーのひとりで、今回その実験にお付き合いさせていただいた、ということなのだ。

標高700mの山岳地なので、朝晩はとても涼しい。が、今ごろの陽気ではそれも日が差し始める7時前までで、朝も9時になれば汗が噴き出す暑さだ。そんななか、釜の手炒りの作業は5時ごろから、前日の室内萎凋分をざるにとりながら、始まる。釜の温度は低めで180℃から200℃ぐらい。葉の水分はけっこうばらばらだが、投入前で50%切るぐらいだろうか、炒り終えてまだ、多少の湯気が立ち上るほど。

パチパチ爆ぜる音を聴きつつ、焦がさないように、軍手をはめた手で撹拌。最初の3~5分ほどは炒り蒸しというか、葉の持つ水分で殺青されるようイメージしながら、できるだけ釜温を逃がさないように、葉に貯めていく。蒸篭で小松菜が浅く蒸されたような状態になったら、今度は葉をできるだけ大きく動かして、熱を逃がすよう、乾かすように全体を見ていく。釜から降ろすタイミングはだいたい10~12分。この頃に葉はしっかり萎れ、茎も硬さが取れている感じで……

お茶の葉は香りが面白い。炒っていると、最初は萎凋のなんともフレッシュな香りがたちこめて、これが次第に釜の香り、火香と一体化してくる。しばらくは焦げる手前の香ばしい香りで、それがだんだんと甘いような、淡い飴の香りに変化するとしめたもの。この時点できっと、茶のエキスの力が、葉の中に込められたような気がして安心する。

葉は機械刈り2番茶。70年のザイライを機械で刈れるところも少ないと思うが、茎、棒多く、葉の厚、大きさもばらばらな、したがって萎凋の具合もワイルドな葉。炒るのは格闘するようなもので、全身汗まみれ、なんとはなし、入れるロットごと全部火の通り具合が違うと思うし、きちっと茶商に教育された方々なら、とてもじゃないけど、相手にできる代物ではないかもしれない。

……わあ。話したいことが山ほど出てくる。えんえんお茶を炒りながら、炒った後の葉がどういう揉捻が良く、どういう乾燥、火入れが良いのか、想像を膨らませていく。そして夜、ヨダケンさんとのおいしいお茶への知恵と工夫話で、おいしいお酒が進む進むのだ。ワイルドにうまさを自慢するお茶があっていい。手づくりの模倣が機械である。おいしさは僕らの手の内にある。きっとうまいお茶をつくろうよ、ヨダケンさん。ありがとう!

Posted on 水曜日, 8月 1st, 2012 at 12:06 AM

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