寒い雨の日、お茶がどうしているか様子を見に行ったら、花がぽんぽん咲いていた。お茶の花は必ず葉っぱの影で咲く。咲く向きはばらばら、どちらかといえば下に向く。お茶の花はきゃしゃで、花開けば一気に花粉を飛ばして地面にぽとぽと落ちてしまう。でなければ樹上で朽ちる。そんなお茶の花が下向きなのは、ほんの短い間でも、雄しべ雌しべを雨や風から守るためなのだろう。

以前、千葉の鴨川で田畑健さん(故人)という方が、和綿の普及活動をしていた。ワタにも外来種、在来種があって、その花は外来種が上に向き、日本の在来ワタ(和綿)は下を向くそうだ。田畑さんによれば雨が多い日本でそういうふうになったのだとか。お茶にも在来外来があるが、ルーツは同じ雲南ラオスミャンマーの国境あたりという。かの地のちゃのきはうっそうとしたジャングルに樹高20メートルにもなる大茶樹として原生していて、見たことはないがその花は太陽に向かって元気に咲いているような気がする。

日本のチャノキは分類上小葉種といって、葉っぱは大陸のものと比べるとずいぶん小さい。紅茶の産地で有名なインドアッサム地方の大葉種・アッサムなど、葉っぱ1枚の大きさが大人の手のひらをゆうに越えるのだから、僕たちの知っているチャノキとはずいぶんとイメージが違う。そのイメージは、畦畔に、生け垣に、株に仕立てた茶の影に、おくゆかしくか細く、ちらちらと下を向いて咲いている、今の季節のお茶の花たちに重なっている。

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