ばん茶など
……お茶の原点に近い暮らしのお茶

日本茶というと、煎茶を思い浮かべますが、お茶は煎茶だけではありません。意外ですが、全国の誰もが煎茶を手軽に飲むようになって、まだ100年ほどしかたっていないのです。

暮らしのお茶たちが、それよりはるかな昔から、親しまれてきました。九州から四国、紀伊半島へと、ちょうど黒潮に添うように、雨が多くあたたかい土地で親しまれてきた、手づくりの、自給の、自家用のお茶から発したお茶です。煮出してがぶがぶ飲む、地方それぞれのばん茶や、漬けて干してつくる微生物発酵のお茶、日干し茶もあります。製法、いただき方もそれぞれ、地域の食とともに、地域に根づいた、ローカルなお茶たちです。

これらのローカルなお茶に共通しているのは、甘いお茶菓子ではなくて、お漬物やごはん、お茶漬け、茶粥に合うお茶だということ。何杯飲んでも頭痛にならず胃を荒らさない、緑色ではなく、茶色がかったお茶です。それは、ふだん使い、日常茶飯の、ほっとする、“暮らしのお茶”です。