手摘みのザイライ

みんな違うかたち

みんな違うかたち

無農薬手摘在来丸釜製。

このお茶にお目にかかれるとは思っていなかった。
手摘みしたザイライのお茶で丸釜の釜炒り茶をつくるという。
茶摘みと丸釜式の釜炒り製茶をお教えいただこうと、
熊本のFさんをお尋ねした最終日。
他の茶農家同様、Fさんはこれまで、風味がばらつき、新葉の伸長が揃わず、
効率のよくないザイライの茶畑は、ランクを一段下げで見てきた。
摘み取りは機械刈り、同じ釜炒りでもモリ式という半自動のドラム式の炒り葉機で製茶。

「今日は天気もよかし、ウチの裏山のザイライ摘むけん…」
…タケウチくんも来てくれたケン、ほんの少し、とFさん。
娘さんと奥様の3人で1時間とちょっと、約20kのザイライの葉を摘んでくれた。

お茶のザイライ、在来とは、品種化された茶樹以外の茶樹。
昔からある茶樹のことで、品種の定かでない実生で育てられたので、
株ごとに特性がばらばらな状態で叢、畝をなす。
そのばらつきは畝を目を凝らして見通すと、よくわかる。
5葉まで大きくなったもの、まだ小さなもの、茶色く色づいているもの、
とんがっているもの、まぁるいもの、ホントに様々だった。

これに対して、1955年ごろから進められた茶樹の品種化では、
このようなばらばらな、効率のよくない茶園が改植されていった。
特定の品種の挿し木苗を移植するという方法で、
またたく間に全国に広がり、品種化茶園率は現在9割を超えている。
その代表的な品種がご存じ「やぶきた」で、この品種だけで8割弱、
静岡県に至っては93%という驚異的なシェアのモンスター品種が育っていった。
僕は決っして良いこととは思わないのだけど。

在来種は、様々な不効率があるものの、昔ながらの味わいとか、
実生で生長したので、直根が深く土壌のミネラルを吸収するので香りが良いとか、
その土地自生の、今では希少な遺伝資源が残されているとか、
で、最近は見直されつつは、ある。

うろ覚えだが、僕の知り合いでは、
静岡梅が島のYさんは80年の、
熊本水俣もMさんで110年在来園が、今も現役でがんばっている。
高知のKさんのところでは、山の木を借り倒した跡に自生えした在来種を、
その芽生えの株のまま、「自然生え茶園」として大切に管理している。

さて、Fさんのお宅の裏山の在来園はと伺うと…
「ワシが農業と継いだあと、昭和32年に父さんとタネを蒔いた園じゃけん…」
…樹齢で55年、ですね。今年はその茶葉を丸釜のキャパ5kg×4回分、20k、製茶にしてくれた。
昨日までのやぶきた園の香りとは一味ちがう。
萎凋もうまくいったか、部屋中さわやかな香気が広がっていた。
これをFさん自ずから、チリチリと炒り葉の爆ぜる音をたてながら、作業が進んでいったのだけど、
……残念なことに、この茶づくり、最後まで見届けることができず、
僕はFさん宅を後にしなけらばならなかった。

「出来上がったら届けてあげるけんねー」
…届くのが楽しみ、心待ちのお茶なのです。

Posted on 月曜日, 5月 14th, 2012 at 11:36 PM

…… , , , , , , , , , , , ,

 

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