高知の旅…釜炒り茶のお話し

tsubayama10
郷土史研究家の広谷喜十郎さんと、お話しを伺った平野さんです。

高知県吾川郡仁淀川町椿山。
いの町の柳野から西にトンネルを抜けて、
かつては栄えていたという池川の集落で松山方面へ。
山深い国道を進み、途中を右に折れると、
谷あいの道は舗装されて走りやすいが、深かった。

石鎚の山塊へ高度をかせぎながら北登、
道に面した斜面にずっと続く杉林は、
なんと石垣組みの段々畑に植えられていた。
かつて土佐から伊予に連なる山は、
静岡に次ぐ大茶産地だったのだ。
その石垣は、チャが、三椏が、雑穀が、
つくられていた跡なのだと聞いた。

どん詰まりが、椿山の里だった。
平野おばあちゃんのところで腰を下ろして、世間話。
つらつらと、おばあちゃんが普段飲む釜炒り茶のお話しになった……

畑に植えちょるのはヤブキタ。自然に生えちゅうのはヤマチャ。
種でそこらへん生えているのがヤマチャ。
これちょっと火であぶっちょいて飲みよりましたわよ。
おいしいくってねぇ……

煎茶いうて、やってきたお茶はねぇ、
80℃とか低い温度で淹れんといけんですがね、沸かしたらいかんが。
私らがつくっちゅうお茶、山で作った釜炒り茶はねぇ、
沸きゆうところに葉をいれんといかんのよ。

芽が早よう出たら5月初めに、遅くなったらおそうなり。
お茶を摘むんはねぇ、年によっておいしかったり、
いまくいかんかったり、いろいろ。

私らはようけじゃないき、自分で飲むだけ。
だから自分とこで釜でやるんです。ほかの人は工場にお願いする。
45kで1万円とられるき、自分でやるんです。

炒る釜は、三椏(みつまた)蒸しちょった
大きいお釜じゃいね、家の中で炒りよります。

火を焚いてお釜がぬくもったら、入れてね、
木の、股になったので、炒るんです。
昔じいさんがつくった、黒文字の股になったのでね、混ぜる。
みんな三椏の股になったのでやるが、やわくて、
あんなんじゃようけやらんきね。

私は炒る、息子が揉むんで。
お茶は、昔の人は足で踏んで揉んでいた。
莚の上で、ヨギ切っちょいて足で揉む。
切らんと団子になるき、切る。切れば細長ごうに揉めるんです。
ヨギを揉み込んだらおいしゅうないの。

息子が揉むんですが、高いところから落として、
ヨギを切っちゅうてから揉むと団子にならず、細うに揉める。
団子になると茶ける、茶色くなるきね。
茶けたらおいしゅうないの。広げても中が乾かんきね。

これね、干しよってから1回また揉み直す。
お釜には戻さんけど、ちょっと乾いたときにもう一度揉みなおす。
そうひたらね、がらがらになったらね、
ほうでて揉めんでいけんけどね、ちょっと乾いたときにね、
揉み直ひたらね、きれいにええ茶ができる。
味が違うんです。

※“ヨギ”って何をさすんでしょうか、聞きもらしました(~_~;)

はじめて訪れた椿山には、3人のおばあちゃんしか住んでいないと聞いていた。
そして行ってみると、現在はこの平野おばあちゃんと、最初にお会いしたおばあちゃん、
そのお二方しか住んでおられなかった。
あとで知ったが、高知県職員の西森文明さんによると、
2009年、ここ椿山には10人以上が暮らしていたそうだ。

(続く)

tsubayama11

Posted on 金曜日, 11月 9th, 2012 at 11:53 PM

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