釜炒り茶
……香り高い暮らしのお茶

釜炒り茶は、お茶っぱを釜で炒ってつくる、さらっと飲みやすい、香りが身上のお茶です。
15世紀ごろに大陸からもたらされたといわれ、照葉(てるは)の森が続く九州、四国、南紀地方で、暮らしのお茶として長く親しまれてきました。ところが戦後、均質に量産できる蒸し製の煎茶機械の普及などにより、急速につくり手がいなくなってしまいました。

高温の鉄の釜で炒る釜炒り茶は、生葉の青臭さを飛ばしながら、葉がもともと持っている香りを引き出します。釜で炒るチリチリとはぜる音を聴きつつ、焦がさぬように、茶葉自体の水分で蒸し炒りしていきます。葉がしんなりしたら釜から降ろし広げて揉み、まとまってきたらまた釜で炒る。これを繰り返すうち、特徴のある勾玉状の茶葉として仕上がっていくのです。炒ることで葉の細胞をカリっと引き締めるからか、水色は清らかで、少しの赤味を帯びた透明感をたたえます。味わいはあっさりとしてくどさがなく、何杯でも飲めがぶがぶと飲めるようです。

この製法は明代(1368-1644)の中国で考案されました。その特長は香りの高さです。蒸して固めてつくるそれまでの製茶法では不可能だった香りの妙味を活かし、中国はその後、烏龍茶に代表される様々な香りの文化を開花させていきました。

日本には15世紀前後に中国から伝わったといわれます。1406年に栄林周瑞が霊厳寺(福岡県八女)に茶の種と共に伝授した、1440年代、長崎平戸にやってきた明の陶工たちにより伝えられた(嬉野式)、1504年に紅令民が佐賀嬉野に南京釜を持ち込んだ、などの記録が残っています。

釜炒り茶のことを綴っています…… 釜炒り茶物語