いにしえのお茶
……古きを訪ね、新しきを知る

大陸からもたらされたチャノキは、山にはヤマチャとして焼畑と共にひろがり、里には奈良時代に一部の人にお茶として飲まれはじめ、鎌倉時代から各地に普及していきました。現代の日本の茶園の約8割は、品種茶園といって、挿し木で増やした新しい品種の茶園になっています。1950年代以降、全国の茶畑が「やぶきた」など、蒸し製の煎茶に向く、挿し木栽培の新しい品種に改植されていったため、種から育てた、昔ながらの茶畑は、わずかしか残っていません。

昔の茶畑は「在来茶園」と呼ばれ、先人が、畑に種をまき、時間をかけて育てられました。かたちや色、大きさ、香りなど、様々な性質が混ざっていて、品種改良が進む前の、昔のお茶の遺伝子資源の宝庫です。樹齢は70年以上で、根張りが深く、少ない肥料で育つだけでなく、広く土中のミネラルを吸収するので、香り高いお茶に育ちます。在来のチャノキは、いにしえの香りを今に伝えているのです。