土地の記憶……お茶とテロワール

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土地の方言をフランス語で“accent du terroir”(アクセント ドゥ テロワール)と呼ぶのをご存知ですか? 同じくフランス語で地面、地球を意味する“terre”は、日本語のテラス(台地・壇)の語源につながり、“terroir”の語源でもあります。では“terror”の意味は?……

直接的には地方、産地の意味となりますが、ワインの世界では、テロワールの意味合いは広がり、その土地の気候、地形、更に歴史文化さえ含まれてきます。ワインに関してテロワールの意味するところは「気候、地形、地質、土 壌などの複合的地域性」のことをいいます。ワインのテイスティングや評価のとき、そのワインの醸す個性が、葡萄の樹の育つ環境すなわち土や水、気候を含めた“地域”の個性を源とするため、これを称し“terror”という表現をするのです。

テロワールというのは、単に土のことをいうのでなくて、方言のようにその土地のあらゆる現象と密接に結びついた、その土地ならではのものです。フランス独特の文化の中で生まれたこの言葉、日本語にはぴったりあてはまる言葉がなかなかみあたりません。「地域性」「風土」という言葉が近いですが、それも十分には表現しきれていません。日本語にした方がかえってややこしく感じるかもしれませんが、テロワールを構成する個々の要素を見ていくことによって、ワインだけでなくあらゆる食べ物の違い、多様性を理解する手助けとなり、それはさらに広げると、世界じゅうのあらゆる文化に、テロワールを感じることになるのではないでしょうか。

お茶もそうです。葉の形、色、香、味、みなそれぞれの産地によって違うはずですが、果たしてそのかけがえのない差異は生かされているのでしょうか?慈しむべき多様性の海から、価値のひとつひとつを拾い、語り、求めているでしょうか?おいしい村は、“terror”、土地の個性を引き出すお茶作りの可能性に心砕き、細々と紡ぐ全国のつくり手を見出し、結んで、新しい時代の食文化の布地に編み込んでいきたいと思うのです。

……これまで有機茶の世界は、有機栽培である点と、茶の栽培の生産者と加工者が同じなことからトレーサビリティがとれるという2点で語られてきており、あとはこの道30年とかの信頼性を加えるくらいで、その文化的側面や、そもそもの味についての理解を促すアプローチは成功しているとは言い難かった。
この状況を切り開く可能性を秘めたキーワードがテロワールという言葉だった。なんとなくの意味は通じていたのだが、ワインの専門用語ということで、できるだけ普遍的な言葉にまとめようと、本とかWEBとかいろいろと調べまくった。かなり学術的解釈がなされていて、さすがと唸る一方、お茶の世界でそのまま通用する知見や実績もなく、結果自分なりの解釈をして、行き着いたのが“土地の記憶”という言葉だった。
可能性としているのは、いまだ自園自家製茶という共通ルールでの社会的評価がなされていないことと、ワインという奥の深い味わい、香りの世界とお茶の世界を同じ評価軸で比較できるか不明だという点を残すからだ。しかしその立脚点には普遍性があり、かつつくり手や土地の存在を無視してはその価値が成立しないという、生産者礼賛の視点は十分に運動足りうると考えた。有機認証などその背景にある生産者や土地が等閑視されてしまうような、ある意味生産者にとり危機的な状況が進む中、“土地の記憶”はつくり手無しには表現され得ないからだ。

Posted on 日曜日, 4月 15th, 2012 at 3:34 PM

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