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お彼岸前、相模の野ではあちこちのお茶畑で、お茶の花が咲き始めていました。舗装されていないあぜ道の脇、お日様の明るいお茶の畝にぽつりぽつりと白い花。のどかで良い感じです。

ののはな童子
ののくさ童子

…確か、詩人の山尾三省さんの未亡人で、今も屋久島に暮らす春美さんが、お正月にする書き初めに書いた句。三省さんの本のエッセイにそんなシーンがあったなと思います。季節の祭事や暦日をさまざまなかたちで取り込んで暮らしてきた山尾家のお正月。しんと冷たい朝の光の中、心して書くことば。春美さんが書いた、ののはな、ののくさ…からは、冷えきった茶室一掬の湯茶のように、両手のひらで包みたくなるような、春の暖かさが伝わってきました。

少し早咲きな今年のお茶の花。お茶の花は一時一斉に咲くのではなく、秋から冬にかけ、硬い緑の葉に守られながら、ぽつりぽつりと順繰りに咲いてゆきます。下を向いて隠れるように咲く姿は奥ゆかしく、よく見れば花びらの下のおしべが綾をなしてやわらかです。寒空に、咲いているそこだけあたたかい。ののはな、ののくさ…、春美さんのことばが浮かんだのは、そんな野のお茶の花咲くあぜ道。

お茶畑に興味を持ち、九州や四国、京都や奈良やを歩くうちに、最近は地元周辺のお茶畑にも興味が湧いてきました。お茶は、この相模川伝いの土地のどこにでもあって、まるで勝手に生え出す草のようです。きれいに整備された畑、そうではない畑、庭の生垣、裏山の下生え…。ひとくくりお茶といっても様々な姿があり、分け入るにつれ色々が見えてきておもしろい。こんなご近所お茶めぐり、しばらく続きそうな感じです。

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